HAPPY BERRY

うみのDIARY

日々思ったこととか

「氷柱の声」

3.11震災被災者の話。
あー。もう震災から10年以上経つものね。被災時に少年少女で多感な時期を過ごした人たちも成人して、このような本が出るのも納得。

で。
ほぼほぼ筆者の体験談を織り込んだ物語なんだろうか。おそらくそう。
取材もして、震災被災者の生の声を取り入れて物語にまとめたもの。

テーマは「被災者のレッテルとどう向き合うか」。
被災者と一言で言っても、被害の程度には大きな開きがあって。
被害が少ないから申し訳なく思ってしまうとか。
「被災者」として社会が求めている像を演じなければならない、押しつけられた人生観とか。
それらに反抗して生きる人と、受け入れる人と。
主人公が何人かの被災者と話し、価値観を聞き、自分との相違を認識して「被災者のレッテル」を自分の中に落とし込んでいく話。

まあ、現実問題、当事者以外はニュースを消費するよね。
震災直後だったり年に一度の3.11当日なんかは、ニュースを見て「被災者」は可哀相と言い、寄付をしたりもする。
「被災者」に望んでいるのは強く生きていく姿だったり、白々しくも希望の言葉だったりであって、ひねくれた言葉なんか望んでない。悲劇の話を見聞きして心を痛めて泣くのを楽しんでいるとも言える。
そんな型にはまったレッテルを貼っておいて数ヶ月で忘れ去るのは、まさに「被災者の人生を消費している」という表現が合っている。消費が過ぎれば「被災者だからってちやほやされて……」みたいな心ない言葉が出たりもする。
でも、どーしようもない。当事者じゃないんだから。
この本でも、社会からレッテルを貼られていることについては書かれているけど、それが悪いとは書かれていない。そういうものです。

ただ、私は自分が幸いにも被災したことが無かったので、こういう建前と本音の溝については全く思いもしていなかった。
「被災者」のフィルターを通すと、努力が正当に評価されないことへの恨みとか。
社会からの期待によって、どう生きるかが決められてしまう息苦しさとか。
それに反発して出て行ったところで、上手く行かなかった時に「被災者としての道」が頭から離れなかったりとか。
そういうことは想像すらしていなかったので、小中学生向けの本かも知れないけれども、目からウロコが落ちた気がしました。

あとね

あーーー
これはーーーーロスチルーーーー!!!
って思ってしまったよね……
突然のニジソー話?
うん……

だって、本人には何の非も無く降ってきた不幸でしょ。
それによって人生めちゃくちゃにされて、「ロスチル」ってレッテル貼られて、普通の人のようには生きていけなくなったでしょ。
参考にすべき心情が書かれていると思ったんだよ。

中でも私が強く反応しちゃったところを書き留めておこう。
いつかネタの一助になるかもしれない。

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おれは忘れたくない。いや、忘れてしまうことが怖い。
泣きながら自転車をこいで帰ってきた自分が撮ったたった1枚の写真、どうしてこの写真を撮ったのか忘れてしまったことに気がついて、忘れないようにいま、覚えている事を全部書いた。
忘れてしまったことはもう同じ温度で抱きしめることはできない。忘れたことに後から意味がついたとき、それがドラマチックになってしまうことが、おれは怖い。

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「忘れない」と何度も繰り返さないと、握った砂のように指の間から少しずつこぼれて忘れてしまうような焦りはよくわかる。
そして、その記憶を誰にも言えずに書き起こすしかなかったこと、その孤独がとてもよくわかる気がした。

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何かを失った人間しか、当事者しか起きたことを語る資格は無い、と思う気持ち。確かに何か言いたいことがあるのに、それを言葉にしてうまく手繰ることができないもどかしさ。綺麗事を言うなと叫ぶ行為そのものが、またひとつの綺麗事になってしまう途方の無さ。
いくつもいくつも糸が張り巡らされた場所で、どう歩けば良いのかわからない。
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これね
被災した記憶をどうすれば良いのか、というところの話です。
確かにあった事実、等身大の自分が経験した事実が、時間の経過と共に風化され、物語のようにドラマチックに作り替えられて消費コンテンツになっていくのがいやだという事だと思う。
了尊だろ…… これをもとにアレンジすると萌えるでしょ……いや ごめん。
結局ね、この文章も、筆者が「被災者だから」重みを増しているっていう皮肉があるわけです。筆者はそれに気付いている。
被災者以外が全く同じ文章を書いたら、自分の境遇に浸りすぎじゃない?って言葉が出てくるでしょう。
それくらい、人の認知は、書いた人のバックグラウンドを見ている。

嫌いな人が書いた作品はどれもこれも気に入らないのと同じだね。(〆がそれかい)

#りょたけ
#読書

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